中心市街地活性化を考えてみよう

レポート9  ぱてぃお大門 蔵楽庭

長野県長野市

 

長野県の県庁所在地である長野市は「牛にひかれて善光寺参り」で知られる善光寺の門前町から発展した街であり、現在でも全国各地からの参拝客が絶えず、長野市における観光の拠点となっています。

善光寺門前に位置する市街地が「大門町」。「ぱてぃお大門」はその大門町の一角に設けられた、一風変わった商業空間です。

 

1 長野市中心部の状況

長野市は善光寺と長野駅を結ぶ関係にある南北軸である表参道の「中央通り」と長野県庁と長野市役所を結ぶ「昭和通り」の十字の道路網とそれを取り囲むように配された環状道路(国道406号、長野大通り等)の内側〜沿道に中心市街地が形成されています。

長野市中心部の商業核は東急百貨店やファッションビルなどが立地する長野駅前エリアと古くからの中心市街地として商店街と飲食店、大型スーパーなどがある権堂エリア、その中間に広がる千歳町の3つに分かれます。長野駅前〜千歳町のエリアは比較的都市的な商業形態が保たれており、権堂エリアの商店街は駅から善光寺に伸びる「中央通り」と市街地の東側を通る「長野大通り」の間に広がっており、様々な課題はありますが、都市規模を考えると比較的「元気」であるといえる市街地です。

左:長野駅前の商業エリア  右:権堂商店街

これら三つの商業核がいわゆる日常使いの商業拠点ですが、このほか、観光地である長野市という都市環境もあり、観光関連商業拠点として飲食店や宿、みやげ物店などが並ぶもう一つの商業核といえる善光寺門前があります。

「中央通り」はこれら4つの商業核を結ぶ導線がいわゆるメインストリートで、長野冬季五輪における表彰式会場であるセントラルスクエアがあり、また年に数度はトランジットモールなどが実施されるなど長野市街地の回遊導線のメイン軸となります。また善光寺の表参道として千歳町以北について長野冬季五輪を契機に景観整備が行われ、古くからの商家作りの保全やビルなどではファサード建築による景観保全がされています。

中央通りの景観整備

 

2 ぱてぃお大門の位置関係

「ぱてぃお大門」のある大門町は権堂商店街と善光寺門前の間、都心部の環状道路を形成する国道406号と中央通りの交差点に位置します。

鉄道など公共交通機関を利用したり、長野市内の宿泊施設から善光寺への参拝客の導線上にあたり、また郊外への路線バスや高速バスの起点となっているなど交通の拠点としての性格も有し、一方で長野市内の官公庁街にも比較的近いなど元来の拠点性を有するエリアです。

ぱてぃお大門前にある高速バス停 大門町交差点からみた「ぱてぃお大門」

中央通り沿いは商店街となっていますが、東西の406号は長野五輪時に整備された道路であり、商店はあまり多くは無く、また善光寺門前ではありますが、日常使いの商店街がベースとなります。「ぱてぃお大門」は観光客は多いものの観光客向けではない店舗のエリアという難しい位置関係に形成されています。

 

3 住民の努力が生み出したもの

「ぱてぃお大門」がある大門町は明治・大正期の土蔵造りの建造物や大正期の洋風建築など貴重な建築物が立ち並ぶエリアであり、中央通り沿いには古い商家が並び、その裏側に土蔵が立地していました。

この大門町の一角、空き商家などが並ぶエリアに土地売却の話が出た2001年6月、「このままビルが建ったら・・・」という危機感を持った地元住民有志の組織による「(有)長野大門会館」が同地を取得しました。

この行動は、これまでの景観整備もあって住民の景観意識というものが極めて高く、「スカイライン」「建築の連続性」といった「町並み保全」という理念を住民が持っていたことが大きく、さらに行政や企業などへの他力本願ではなく、「自ら動くことで解決する」という「まちづくりの王道」を実践した例として高く評価できるものです。

この取得した土地の奥には土蔵があり、また隣接地には使用されていない土蔵や三階建ての楼閣など特徴ある建築物が残されていました。そこで、この取得した土地を「中庭」のような空間とし、その周囲の建築物を含め回遊を持たせる商空間を形成しようとしてこの「ぱてぃお大門」が立案されたのです。

ぱてぃお大門のアイデアは中心市街地活性化としてTMO構想の認定を受け、改修の検討を開始し、2003年に事業主体をまちづくり会社(TMO)に事業を移管して改修及び整備工事をスタートしました。

4 単に景観だけではない魅力的な空間

2005年11月に、2年間の改修を経てぱてぃお大門はオープンしました。

「ぱてぃお大門」のような「土蔵造りなどを活かした商業施設」というと、「レトロ」を売りにした温泉施設やテーマパーク的な観光施設のイメージがあり、そういったものを想像しがちですし、また建物の保存に主眼が行ってしまう傾向があるのが一般的といえる状況があります。

しかし、「ぱてぃお大門」はそんな懸念を一掃してくれるものです。観光客向けのみやげ物や観光客向けの食事空間だけではなく、イタリアンレストランやインテリアショップ、バー、雑貨店など多様な形態の店舗が入り、しかも「和風」にこだわらず、土蔵や古くからの建築物を活用しつつトレンドにマッチさせた店舗となるなど単なる「レトロ施設」の域を超えたものとなっています。また、一部は土蔵を活かしつつもモダンなデザインを取り入れることで一風変わった雰囲気をかもし出しています。

メインとなる中庭の空間 入り口にある情報スペース
古い土蔵や建築物を活かした飲食店
土蔵の一角にあるモダンな空間やデザイン

このような空間はいわゆる「坪庭」と同じような工夫であり、回遊路のアクセントとして、来街者の好奇心を煽るとともに滞留空間としても機能します。また、この空間にはただの中庭ではない仕掛けが施されています。

建物の中を通り抜ける通路や小庭のような空間、さらに裏口があたかも「勝手口」のような細い通路でつながるなど回遊を促し好奇心をくすぐる仕掛けが豊富です。

このような仕掛けにより回遊にアクセントをつけるだけではなく、メインのエントランスだけではなく周囲に回遊行動を広げることが可能となり、単に一施設としての効果だけではない波及効果を与えることができます。

裏手に伸びる「勝手口」的な通路(左:施設側 右:出口側)
裏口へ伸びる小径 通り抜けが可能な建物内通路
高低差を利用した建物内の不思議な通路 メインの中庭に続く通路

このように単に「土蔵造り」「商家造り」といった「景観」「町並み」だけではなく、施設内での楽しめる空間整備と、多様な形態の店舗の導入により、一見さん的な観光客だけではなく、地元の方々のアフターファイブでの行動などにも対応可能であり、幅広い客層を取り込むことで、通年の来客を促す活性化に対応できます。

観光客向けの施設でもあり、市民の方々が使える施設でもあるという多様性はあまり見られないものであり先進的であると言えます。

 

あまり注目されていないものの長野市の中心市街地活性化策や都市計画にはいつも感心させられます。長野冬季五輪前からの都市改造が姿かたちとなって見えている中で、さらにこのような施設が整備されることで都市としての魅力が向上しています。

地方都市として決して大きいとはいえない規模でありながらしっかりした都心を形成やすばらしい施設を作り上げる裏には長野市のまちづくりに対する市民、行政、企業の様々な形での積極的な関与が活きており、まさに市街地活性化の好事例といえるものです。

参考文献・出典)

ぱてぃお大門ホームページ http://www.machidukuri-nagano.jp/patio.html

TMO まちづくり長野ホームページ  http://www.machidukuri-nagano.jp/

ぱてぃお大門パンフレット


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最終更新 2006.5.8  取材 2006.6