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観光地における公共交通 |
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レポート8 タモントロリー バスサービス |
米領グアム島 |
※本稿は交通総合フォーラムとのシェアコンテンツです。
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グアム島は面積は549km2(淡路島と同程度)、人口は約16万人、観光と米軍関連が主たる産業となっている島国です。
1500年代後半にスペイン領となり、1898年の米西戦争の結果、アメリカに割譲され、太平洋戦争期の日本統治を経て現在は制度上は米国の自治属領である準州となっており連邦政府下に属するグアム政府が統治を行っています。
成田空港から飛行機で約3時間。近くて安くて短い期間で手軽に行ける「安・近・短」の代表的なリゾート地として多くの日本人観光客が訪れ、その数は年間100万人を超えています。世界的に見ても屈指といえる美しい海と珊瑚礁などのビーチリゾート、太平洋戦争の戦跡やスペイン統治下の名残がある町並み、ゴルフなどのアクティビティに免税によるショッピングなど多彩な観光資源があり、近年では日本人だけではなく、韓国・香港・台湾・中国などからも多くの観光客が訪れており、またヨーロッパやアメリカ本土などからも「未知のビーチリゾート」として注目を集めているリゾートアイランドです。
地勢としては火山島と周囲の珊瑚礁が一体となって形成された起伏に富んだ島であり、フィリピン海側(北西側)にはリゾートホテル等が集まる観光エリア、中央部に行政・商業機能が集まり、南部海岸沿いと平坦な北部に集落が連なります。
そんなグアム島ですが、鉄道はなく、熱帯ということで徒歩抵抗が非常に強いこともあって自動車が主たる交通手段となっています。しかし、一方でリゾートエリアはハワイのワイキキなどと比べても広く、また島内各所に観光地が点在していることもあり観光客向けの公共交通機関が非常に発展しており、その規模は世界的に見ても高いレベルのものとなっています。
そんな観光客向けの公共交通の根幹をなしているサービスが「トロリー」と呼ばれるバスサービスです。日本の公共交通論ではついつい忘れられがちですが、そのシステムは日本でも大いに参考になるものといえます。
| 1 グアムの公共交通 |
グアムの公共交通としては、現地在住者向けのサービスとして、GMTA(Guam Mass Transit Authority)による路線バスサービスが9ルートで実施され、島内のほぼすべてを巡る路線が設定されています。
また、観光客向けのサービスとして、グレイライン(ラムラムツアーズ)による「ラムラム路線バス」とタートルツアーズによる「ショッピングバス」があり、さらに大規模免税店であるDFSギャレリアが来店者送迎用の無料バスサービスを実施しています。
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| 左:GMTAのバス路線 右:DFSのバスサービス | |
| 2 観光客の利用に徹底的にこだわったトロリーサービス |
観光客向けのバスサービスである「ラムラム路線バス」(グレイライン:ラムラムツアーズ)と「ショッピングバス」(タートルツアーズ)は「トロリー」と呼ばれています。その姿形がトラムに似ていることからトロリーと名付けられたもので、日本でもよく見かける「レトロスタイル」のトラム型の車体を用い、オープンデッキで景色などを楽しみながら乗車できるものとなっています。
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リゾートらしい特徴的な形のバス(左:ラムラム路線バス 右:ショッピングバスダブルデッカー) |
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このトロリーバスのルートは観光客の導線に完全にマッチしたものとなっています。
もともと、1970年代以降の日本人観光客の急激な増加があり、1980年代頃から添乗員付きの「足つき・メシ付き」ツアーから個人自由行動に観光客がシフトし始めたことから、それに対応する日本人観光客の足として整備されたものがこのトロリーバスであるため、日本人観光客の導線に見事にマッチしたものとなっています。
具体的にはリゾートタウンであるタモン地区からハガニアまでホテルが連なる「ホテルロード」を基本軸に、大規模免税店の「DFSギャレリア」「タモンサンズプラザ」、アウトレット店の「グアムプレミアムアウトレット」(GPO)、大規模ショッピングセンターの「Kマート」「マイクロネシアモール」「ハガニアショッピングセンター」を結ぶ路線が設定され、複数系統の運行もあって2社それぞれがおよそ10分間隔でバスに乗車できるダイヤが組まれています。
にぎやかなホテルロード(左:アウトリガーグアム前 右;JPスーパー前)
2社ともにニッコーホテル〜プレミアムアウトレット間の観光客にとってメイン導線であるホテルロード区間を基本区間とし、ホテルロードの東南部を並行するマリンドライブ沿いの観光客に人気の大規模スーパーであるKマート、ショッピングセンターのマイクロネシアモールとハガニア地区のホテル等を回る路線の組み合わせにより路線が設定されています。
これらの路線にはすべて系統番号・記号・ラインカラー(ショッピングバスは1〜6の数字、ラムラム路線バスはアルファベット記号またはラインカラー)が設定されており初めての利用者でもわかりやすくなっています。
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サービス名 |
系統 |
路線名 |
運行区間 |
主な経由地 |
備考 |
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ラムラム 路線バス
(PMTグアム社のサイト) |
G (緑) |
タモントロリーグリーンライン |
グアムプレミアムアウトレット〜ニッコーホテル〜マイクロネシアモール〜グアムプレミアムアウトレット(内回り循環) |
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Y (黄) |
タモントロリーイエローライン |
グアムプレミアムアウトレット〜マイクロネシアモール〜ニッコーホテル〜グアムプレミアムアウトレット(外回り循環) |
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W (白) |
タモントロリーホワイトライン |
グアムプレミアムアウトレット〜アルパインビーチタワー〜パレスホテル〜プレミアムアウトレット |
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(紫) |
アガニャコース |
グアムプレミアムアウトレット〜チャモロビレッジ |
アガニャショッピングセンタ |
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(赤) |
恋人岬シャトル |
DFS〜恋人岬 |
マイクロネシアモール |
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(青) |
サークルアンドサウス |
南部循環路線 |
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観光周遊路線 |
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ショッピング バス
路線図 |
1 |
サークルエクスプレス |
グアムプレミアムアウトレット〜ホテルロード〜マイクロネシアモール〜Kマート〜プレミアムアウトレット(内回り循環) |
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2 |
ベイサイドマリンエクスプレス |
マイクロネシアモール〜DFS〜Kマート〜グアムプレミアムアウトレット〜パレスホテル〜アルパインビーチタワー〜グアムプレミアムアウトレット〜Kマート〜マイクロネシアモール(循環) |
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3 |
タモントロリーエクスプレス シングルデッカー |
ニッコーホテル〜グアムプレミアムアウトレット(ホテルロード) |
マイクロネシアモール DFSギャラリア アカンタモール Kマート ヒルトングアム |
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5 |
タモントロリーエクスプレス ダブルデッカー |
ニッコーホテル〜グアムプレミアムアウトレット(ホテルロード) |
DFSギャラリア アカンタモール ヒルトングアム |
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6 |
アガニャ・レオエクスプレス |
グアムプレミアムアウトレット〜レオパレスリゾート |
チャモロビレッジ アガニャショッピングセンター |
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A |
DFSギャラリアエクスプレス Aルート |
DFSギャラリア〜ニッコーホテル |
ウェスティンホテル |
無料バス |
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B |
DFSギャラリアエクスプレス Bルート |
DFSギャラリア〜ヒルトン |
PIC ロイヤルオーキッド |
無料バス |
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C |
DFSギャラリアエクスプレス Cルート |
DFSギャラリア〜アルパインビーチホテル |
サンタフェ パレスホテル |
無料バス |
路線図併設のバス停とバス車体の案内
バス停は各ホテルとショッピングセンターに設けられているほか、多少の制約はありますが基本的にはフリー乗降が認められており、手を挙げることで乗車が可能というフリー乗降サービスを実施しています。バス停は誰にもわかりやすい大きな看板があるほか、一部には広告付きシェルターも整備されており、わかりやすくなっています。
判りやすいバス停とバスシェルター
また、各ショッピングセンターはバスターミナル機能を有しており、入り口に横付けされます。これにより徒歩抵抗が減少されるだけではなく、南国特有の酷暑の中でバスを待つ必要は無く、冷房の効いたショッピングセンター内でゆっくり待つことができます。細かい点ですが利用者のニーズに確実にこたえているといえましょう。
バスターミナル機能をもつショッピングセンター(左:DFSギャラリア 右:マイクロネシアモール 便数はおよそ20〜30分間隔で各系統が運行されており、2社それぞれでメインとなるホテルロードではおよそ5〜10分間隔、2社合計では数分ごとと高い頻度での運行がされていることから気軽な利用にも耐えうる利便性を有しているとも言えます。
| 3 見事な利用促進策 |
このようなバス路線は観光客にとって使いやすいものではありますが、単純に運行していれば乗ってもらえるというものでもありません。いくら利便性が高くても存在が認知されなければなかなか使ってはもらえません。
都市内であればその存在は日常生活の中で認知をされるものですが、観光地では「一見さん」でもある観光客に着いたその日には認知される必要があります。
そこで、このトロリーで行われている策は「積極的な観光客の誘導利用」です。
グアムの場合、日本人に限らずほとんどの観光客はパックツアーを利用しています。グアムにおけるパックツアーのほとんどは添乗員がガイドするツアーではなく往復の航空券とホテル・空港〜宿泊施設の送迎がセットになったツアーであり、現地での移動は原則各自で行うことになります。そこで、この現地移動に対応できるこのようなトロリーの利用券をツアーにセットしています。この利用券は「ショッピングカード」とも呼ばれ、「○○パス」「○○カード」などとして免税店の入店証等現地における様々なサービスに対応できるカード券となっています。
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| バスの車体に利用できるツアーカードが貼られている(ショッピングバス) |
また、1回の乗車は2社とも$2と決して安くは無いものですが、1日券は$6、1週間券は$10と格安であり、ツアーではない個人旅行者の多くもこのチケットを購入しているようです。このような思い切った料金設定が可能な背景にはツアー客利用の確実な収益やショッピングセンターやホテル・現地ツアー会社が運営に関与している(一種の送迎バスサービスでもある)ことなどもありますが、運行固定費が一定である以上、多少安くても乗ってもらうほうがバス会社として有益ということがあると言えます。特に通勤通学といった「定常」利用がほとんど見込めないこのようなバスサービスの場合には観光客数が多い時期=利用者が多い時期であり、その時期にはツアー客なども多く確実な収入があるということになりますから長期券を割引にする効果は大きいといえます。
このような利用促進策の実施は、単なる利用促進というだけではなく回遊の増加やアクセス手段の提供という効果を生んでいます。その結果としてショッピングセンターやホテル等の積極的な関与を得やすくなることで観光客の多様な行動パターン支援につながっており、ちょっとした工夫ですが大きな効果を生んでいるといえます。
| 4 日本でもぜひとも学びたいそのコンセプト |
このような観光地のトロリーサービスはかなり限定的な条件下でしか成立できず、日本の地方都市などがまねをしても成功するものではありません。また、すでに地方部では類似のサービスがあるところもありますが、その利便性でグアムやワイキキのトロリーサービスには及ばないものもあります。
「複数の施設の送迎サービスを一体化する」「利便性の高いサービスをターゲットにベストマッチしたもので提供する」「ニーズに答えるとともに新たなニーズの創出を図る」という公共交通機関として求められるサービス水準でバスサービスを提供している好事例といえるものであり、そのまま真似できるものではないですが、その考え方とバスサービスとしての「あり方」は国内の観光地だけではなく買い物流動への対応や私事目的公共交通の活性化に参考になるものです。
最終更新 2006.5.8 取材 2003.6、2006.4