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都市部小規模商店街の活性化策を考える |
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レポート6 和泉明店街 沖縄タウン |
東京都杉並区 |
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東京都区部西部に位置する杉並区は人口約50万人。区内には高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪など中央線の駅前を中心に個性的な商店街が広がり、また浜田山、井荻、下井草など私鉄駅前にも個性的な商店街が形成され、単に近隣商業という枠を超えた商店街となっています。
しかし、区内各駅前の商店街すべてが活性化されているわけでもなく、全国各地の都市部などと同様、既存商店街の活性化は課題であり、京王線代田橋駅前に広がる「和泉明店街」もその一つとなっています。
一般的に中心市街地活性化には個性の活用といったことが言われますが、現実的には「個性など無い」「どこにでもある商店街」というものが数多くあるもの。この和泉明店街も人気テレビドラマの舞台となるなど個性はありますが、あくまで「よくある旧き良き商店街」という世界であって個性はありますが、その個性で活性化できるほどのものではありません。
そこで、この商店街がとった策は「沖縄タウン化」という策。
その策のとりあえずスタートの成果はなかなか興味深いもの。その背景などを考えて見ましょう。
| 1 中心市街地活性化での個性創出 |
中心市街地活性化策で何の脈略も無い個性創出はあまり無いものです。
個性がある市街地や商店街というものは歴史や地域文化などに裏付けられた何らかの特色がベースにあるか、あるいは業種の個性というものから派生したと考えられます。
たとえば、大阪・鶴橋や東京・大久保、川崎・川崎区などのコリアタウンンなどは歴史的な裏づけがあってのコリアタウンであり、横浜・中華街や神戸・南京街なども同様のものと言えます。川崎のコリアタウンや神戸の中華街は近年注目されることで整備が進みましたが、以前からその性格は有していましたし無理矢理作ったものではありません。また、神戸・岡本(摂津本山)や東京・西荻窪、名古屋・八事等は個性的な商店街が形成されていますが、これも高級住宅街であったり大学があったりという背景があってのこと。店があつまるから個性が形成され、それが「街のテーマ」となっています。
一般的には個性を無理に作ると、その個性が「余所行き」といった雰囲気をかもし出し、街のイメージとマッチしないことでコンセプトが見えなくなります。特に商店街の場合、その店舗構成や外観だけではなく店の品揃えや商品、また飲食店の構成などまで変えることは難儀なことであり、テーマを決めても外観整備で終わってしまったり、一見個性的でも固定客をつかんだり、商圏拡大につながるほどのものにはなりません。
この和泉明店街も、杉並区は沖縄との関係はそれなりにあるものの、だからといって特別に深いわけではなく、区民でもよほど郷土史や郷土の地理環境に詳しくなければその関係性までは理解できません。ましてや代田橋・和泉と沖縄の関係性はなかなかわかりにくいものです。通常であれば、前述のように失敗しそうなものですが、その見識を改めざるを得ない工夫をしている。この点こそが今回の「沖縄タウン化」のすごい点であるといえます。
個性が形成しにくい、あっても特に周辺との差別化が難しい商店街でのこの個性創出は全く新たなまちづくりの可能性を提示していると言えます。
| 2 個性による差別化を図る工夫と努力 |
前述のように、このような商店街活性化策といえば、店側の努力というよりも外観整備などの方向に話が行きがちです。
しかし、和泉明店街では商店街だけではなく、商店自らの努力が非常に強く見ることが出来ます。
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| 沖縄の織物やシーサーなどをイメージした外観 | 沖縄らしいイメージの照明 |
外観整備は行われていますが、特に強い個性をイメージするものではありません。どちらかと言えば特徴的なものは外観ではなく、商店の工夫をしている点といえます。
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| 泡盛や沖縄のビールが店頭に並ぶ酒屋 | 普通の料理店に沖縄の料理がある |
酒屋には泡盛や沖縄のビールが店頭に並び、ビールなどのノボリが沖縄のメーカーのものであったりします。また、中華料理店などに沖縄メニューがあったり、豆腐屋に島豆腐が、あるいはお惣菜を売る店にゴーヤチャンプルーがあったり、日用品店に何食わぬ形でシーサーが置いてあったり、料理屋で沖縄のビールや泡盛が出たりと「沖縄タウン」のコンセプトにあった「商品」を提供しています。
また、どこでも問題となっている空き店舗に沖縄の店舗を呼び込む、あるいは商店街直営の食料品店で沖縄のスーパーやコンビニで買えるようなものを扱うなどの対策も見られます。このような空き店舗策や店舗運営方策は下手に市民交流スペースなどでお茶を濁すことが多い空き店舗対策としては興味深いものです。
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| 商店街直営店の食料品店 | 市場内にある沖縄物産店と料理店 |
また、この商店街の途中には大都市場という「市場」があります。この市場、東京西部では良く見られる市場ですがその市場の中はまさに那覇や名護、コザあたりで見られる市場。沖縄のビールメーカーのちょうちんに沖縄料理店、どこからとも流れる沖縄の音楽。そして商品も物産館を中心にしており、規模こそまだまだなれどプチ牧志市場といった雰囲気すらもあります。
まさに、商店街全体で「リトル沖縄」という方向性にあわせた努力が見られ、結果として「沖縄のどこかの町」といった雰囲気を形成しています。それが「リアルな沖縄」に近いイメージの形成に寄与していることで、沖縄タウンとしての強烈な個性を作り上げることが出来ています。
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大都市場の入口 |
市場内にある物産店。置いてある品物は沖縄で買うのと変わらない価格を実現している店が多い。 |
| 3 沖縄タウン運営で光る巧妙な技 |
沖縄タウンの運営にあたり、地元商店街は様々な工夫をしています。中でも卸の一本化、仕入れ問題の解決、沖縄側との窓口となる運営会社の設立が大きなものでしょう。
商店街が自ら動いて活性化の努力をしている例は数多くありますし、このようなまちづくり運営会社の設立は様々な形であるものですが、和泉明店街の規模でこれが出来ていることは大きなポイントです。
一般的な手法と個性的な独自手法を上手く組み合わせることで商店街活性化の運営をうまくやる。まさに巧妙な技が効いているといえます。
| 4 強い個性と商店街の性格 |
沖縄タウンは2005年3月のオープン以来、様々な形で報道がされています。
このような報道により沖縄タウンの知名度が上がることで近隣からの広い集客が予想できます。特に沖縄は近年注目されている地域であり、沖縄のアンテナショップや物産店は首都圏だけではなく、近畿圏などにも広がっています。また、泡盛などはいまや居酒屋などの定番となっており、ゴーヤチャンプルーなどの沖縄料理ももはや「珍しい」ものではなくなっています。
それだけに東京圏の幅広い圏域からの集客につながるだけではなく、観光地としての性格すらも期待できます。
このような強い個性を持つ商店街は、単に差別化だけではない効果を生む。その典型といえましょう。
また、この和泉明店街の特色として、あくまで近隣商業地としての性格を捨てていないことも見逃せません。沖縄タウンだからと沖縄に固執するのではなく、これまでの商店街の利便性を保っています。この工夫は中心市街地の活性化策として忘れられがちですが非常に重要なことです。
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| これまでの商店街機能は残る |
| 5 他の都市での適用性 |
和泉明店街の策はどこでも出来るものではありません。ある意味で、商店街の「強い危機感」が商店の積極的な協力という形に表れているのでしょう。
最大の学ぶべきポイントはここです。商店が努力をしているからこそ商店街の活性化につながる。個性を上手く作り差別化ができれば大規模小売店舗との差別化も可能である。その点を考えず、大規模店舗出店批判などに固執していては商店街としての安楽死を望むのと同じです。
この和泉明店街の策は、単に「沖縄タウン」という個性に注目がされがちですが、それを支える商店の努力や工夫を考えなくては正当な評価は難しいでしょう。
和泉明店街はリアルな沖縄の下町商店街のイメージを作り上げることで幅広い層に訴える力があります。またテーマパークやショッピングセンターなどに見られる「リトル香港」「中華街」なども、やはり「リアル」という言葉に近いものを各店舗が行っているからこそ成立するのです。
活性化に何が必要なのか、端的に示した好事例といえます。
最終更新 2005.4.18