レポート2 地方都市における都市交通政策の実例
オーストラリア パース
オーストラリア西岸のインド洋沿い、西オーストラリア州の州都パース市は「世界で最も住みたくなる町」とも形容される美しい街であり、緑豊かで、コロニアル調の町並みと、近代的な高層ビルとがうまく調和した美しい都市景観を形成しています。別名として「孤立した100万都市」と言われるだけあって、周囲は海と砂漠というなかの、スワンリバー沿いに広がる都市です。
この都市の街づくりは「知る人ぞ知る」の世界で、都市計画ではアメリカ・ポートランドやブラジル・クリチバ、交通政策ではフランス・ストラスブールやドイツ・フライブルグほど有名ではありませんが、その実施されている政策は目を見張るものがあります。
パース市街(South Perthから市街を望む)
パース都市圏はパース市を中心都市として、郊外の港湾都市フリーマントルとさらにその周囲に拠点を有する都市圏構造を持ちます。
都市圏構造の形状としては鉄道・道路に沿って市街化が進み、都心部から放射状に広がる市街地と放射軸上にある拠点都市というもので、日本の都市構造と基本的には類似しています。
ヨーロッパの都市構造にありがちな旧来の城壁を核とした同心円状の都市展開とも異なるものです。
パース都市圏の概略図
都心部の都市構造に目を向けると、パース駅と南端スワン川沿いの桟橋を結ぶ南北軸、東西方向に西側の小高い丘にあるキングスパークから東側のスワン川を沿いの「バースウッド」を結ぶ軸が形成されます。
パース都心部はスワン川の河岸段丘に形成され、スワン川から南北に向かって高くなっていく地形となっており、都心部の中心部に当るエリアは高台に位置します。
都心部はパース駅南側にある「歩行者専用街区」とさらにその南側のビジネス街により形成されます。
歩行者専用街区はWELLINGTON、BARRACK、WILLIAMの3STREETとST.GEORGESテラスの4本の街路に囲まれ、東西の『HAY STREET MOLL』と『MURRAY STREET MOLL』の二つのぺデストリアンモール(歩行者専用街路)をはさむ3ブロックから形成されます。
街区内にはパース駅から伸びるモール(ぺデストリアンデッキ)とショッピングセンター内通路(アーケード)による南北通路が互い違いに設けられ、各東西軸との交差部はちょっとした広場になっています。
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パース都心部概略図 |
| 特徴ある歩行者空間 | |
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| 歩きやすい道路環境 | |
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| モール内のアーケード | モール内広場 |
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| ぺデストリアンモール(左:MURRAY STREET MOLL 右:HAY STREET MOLL) | |
パース市内は一方通行と交通規制によるトラフィックセルを導入しており、市街地内を通り抜けることが出来る街路はある程度制約があります。このトラフィックセルと歩行者専用街区により段階フリンジ的な発想による交通抑制を実施し、自家用車の流入を抑制しています。
その代償措置として、フリンジにあたる外周部には集約駐車場が設けられ「自然な誘導」を図ることに成功しています。
さらに、都市近郊部にもパークアンドライドが設けられ、公共交通との連携が進んでいます。
特に特徴的であるのは都心部の公共交通が無料であることで、これにより駐車場に車を止めた後も水平エレベーター的に鉄道やバスを利用可能で、自動車を抑制しながらもアクセスを確保している好例です。
| パークアンドライド駐車場 | |
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| 鉄道駅前のパークアンドライド駐車場 | ハイウェイバスストップに併設された駐車場 |
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| 都心部フリンジに設けられたバスターミナル併設駐車場 | |
| 特徴ある道路構造 | |
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| トラフィックセルを全面的に導入 | 市内には自転車道も整備 |
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| 横断歩道にはハンプを採用 | 荷捌き駐車場 |
パース市内の公共交通で世界的に知られているサービスはCATと呼ばれるバスサービスです。CATとは「Central Area Transit」=都心部公共交通の略称で、ノンステップのバスが3〜10分間隔で都心部を循環しています。料金は無料。駐車場、駅、繁華街、オフィス街、観光地をくまなく回り、自動車アクセス、公共交通アクセスの補完だけではなく都心部の重要な交通機関として利用されています。
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パース市内を巡るCAT路線(青がブルーキャット、赤がレッドキャット) |
パース市の公共交通は運営が一元化されています。バス・鉄道については「Trans Perth」が一元で運営し、運賃・料金は共通であり、いわゆる「シームレス」となっています。
また、運賃はゾーン制度が採用され、信用乗車制度が採用されています。信用乗車制度とはセルフチェックとも呼ばれ、基本的に改札機は無く、乗車券を各自が購入して鉄道に乗車する、あるいはバスで乗継券をもらうというものです。回数乗車券(マルチライダー)などは「キャンセラー」と呼ばれる打刻機で乗車日時を印字して乗車します。普通乗車券は乗車券購入時に自動的に打刻されます。
| 都心循環バスCAT | |
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| ノンステップバスが使用されるCAT | バス停にはバスロケーションが完備している |
| パース都市圏の公共交通 | |
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| 乗車券(ゾーンチケット)と券売機 | チケットキャンセラーとマルチライダー |
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| パース都市圏の基幹交通である鉄道 | 市内の交通拠点となるパース駅 |
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| パース都市圏の主要な足である路線バス | |
パースの交通システム、都市構造は計算されつくしたものですが、歴史的な推移があってのヨーロッパとは異なり、明確なフリンジもない、地形的制約がある、乱開発を招きやすい地形という状況でありながらこのようにすばらしい都市交通・計画を実施していることはわが国への比較適用事例としては優れているといえます。
しかし、パースの交通網のヒントには日本のシステムもあります。各地域に合わせた形でよいものを取り入れている。この点こそわが国で見習うべきところといえるのかもしれません。