§2 激変する市街地
 

ゆいレールの開業は交通以外でも都市開発に大きな変化のきっかけを作っている。

ゆいレールの沿線では新市街地の形成が進み、人口の大幅な増加が見られる。中でも那覇新都心や小禄地区などは大都市にも匹敵する高い都市機能を有する拠点として整備が進むなど、那覇市の新たな市街地展開の一助となっている。

また、既存市街地でもゆいレール開通にあわせて活性化策が模索されており、さまざまな形で都市づくり、まちづくりにインパクトを与えているといえる。

そこで、都市計画面への効果をみていこう。


1 増加する人口
ゆいレールが開通した2003(H15)年の前後における那覇市およびゆいレール沿線の人口増加を見ていこう。

ここでは、住民基本台帳人口をもとに2000(H12)年から2007年(H12年)までの人口の変化を見ていく。

那覇市全域の人口(ピンクの棒グラフ)は増加を続けており、2000年に対して2007年で約4%の増加となっている。このうち、開発が急速に進んだ那覇新都心以外の人口変化をみると横ばいからやや減少基調となっており、新都心が那覇市の人口増加を引っ張っていることがわかる。

一方、ゆいレールの沿線で見ると、駅から半径1km圏域では那覇市の人口増加に比べて若干ではあるが早い立ち上がりで増加を続けている。これは2003年のゆいレール開業に前後して、ゆいレール沿線から開発が進んでいったことを示しており、ゆいレールが那覇新都心開発において起爆剤となったと見ることができる。

那覇市の地域別人口の推移(住民基本台帳人口 各年次11月人口)

沿線の圏域と開発区域

那覇市の人口変化を町丁目単位で見たものが下図である。

人口の増加は那覇新都心、小禄の沿線2箇所にある再開発地域が中心となっていることがわかる。一方で都心部では人口の減少が見られるほか、北部の首里周辺の減少も著しい。

しかし、細かく見ていくと、ゆいレールに比較的近い地域では減少の中でも増加に転じている、あるいは減少度合いが低いケースが見られる。主利益の北側、市立病院前駅周辺、小禄駅南側などである。

つまり、ゆいレールにより新都心以外の地域でも人口増加や減少の抑制に一定の寄与ができていることがわかる。

 

町丁目別人口増減率(住民基本台帳 2000(H12)年と2007(H19)年の比較


2 都市開発との相乗効果

那覇市の開発地域はゆいレール沿線で進展している。真嘉比・古島地区については現在施行中であるが、区画整理の小禄金城地区と、新市街整備である那覇新都心についてはおおむね整備は完了している。

ゆいレール沿線の都市開発地域

この中でも那覇新都心の整備はゆいレールの利用に大きな要因となっているだけではなく、一方で那覇新都心開発においてゆいレールが果たしている役割は大きい。

   
那覇新都心(2007.10)

那覇新都心では、ゆいレールおもろまち駅前のDFS沖縄、隣接するサンエーメインプレイスといった商業施設、行政機関、ホテル、県立博物館などの集客施設が整備され、北部および西部エリアでは住宅の整備が進んでいる。

もともと市街地に隣接する米軍用地であり、立地としては那覇市街に隣接して位置することから開発圧力は当然ながら大きいものがある。よって開発がされていることそのものはゆいレールの効果といえるものではない。

しかし、ゆいレールの開通とおもろまち駅の開業により、地域の核となる街区が整備されたこと、また商業地、業務地、観光地としてのアクセスが担保されたことで、企業の進出等にプラスになっていることは否定できず、車中心社会の沖縄といえども、公共交通アクセスの整備は都市開発への起爆剤としては十分に大きく、開発地域内循環のコミュニティバス運行など公共交通の利便性は高い。

新都心のコミュニティバス(2007.10) おもろまち駅ホームから見た新都心(2007.10)

また、南部の小禄地区は米軍住宅の跡地開発により整備されたエリアであり、那覇市の郊外市街地として整備が進んでいる。小禄地区は那覇新都心とは異なり、小禄および赤嶺駅前の商業集積と、沿道への近隣商業の進展を中心に住宅系の整備が進められており、ゆいレールの通勤・通学利用において重要な地域となっている。


3 既存市街地の再生

ゆいレールの通過する旭橋、久茂地地区(県庁前)は業務市街地となっている。

那覇市の業務集積状況(従業者分布 H7事業所統計調査)
58号から見る業務地区の久茂地(県庁前)方向 旭橋駅周辺の業務市街地

これらの市街地では業務系の郊外展開や人口流出も見られたが、ゆいレール開業後は再開発が進み、人口変化を見ると旭橋駅前などで人口増加が見られるなど土地利用の転換による既成市街地の再生が見られる。

また、商業系ではより多くの効果が見られる。沖縄を代表する繁華街である「国際通り」では、ゆいレール開業前後で比較すると歩行者交通量の大幅な変化が顕われている。

これまで国際通りは観光地としての側面が強く、バス停があり三越やOPAがある沖映通り〜牧志が中心であり、それとは別に「パレットくもじ」がある県庁前が核となっていて、この間、約600mほどで若干の「空白」が生じていた。無論、他都市に見られる空洞化ほどではないが、歩行者が一部に偏る形態となっている。

しかし、ゆいレールの開通による美栄橋駅設置が新たな流動を促進させる「アクセスポイント」として機能したこと、街区内流動を支える交通手段ができたこともあって歩行者の流れが変化したことにより、歩行者数が一部で大幅に増加している。

夜の国際通り 電線類地中化後(2007.7) 国際通り 電線類地中化前の様子(2003.11)
ゆいレール開通前後の商店街通行量の変化 (出典:ゆいレール延伸計画報告書 沖縄県 資料:運輸政策研究機構:都市鉄道の整備効果に関する調査)

ただし、これは単純なゆいレールの効果だけではなく、沖縄ブームによる観光客の増加、電線類地中化による歩行空間の改善、商店街自らの店舗形態見直し等による自助努力があってのものであり、ゆいレールは間接的な「フォロー」をしたと考えるのが自然であるといえる。また、三越付近での減少は、歩行者流動の流れの変化による反動であるといえる。


ゆいレールによる直接的な効果としてではなく、いわゆる波及効果として都市開発の圧力を高めたことはわかる。

全国的な人口減少傾向が見られる中で那覇市の人口増加は続いており、その牽引力となっているのはゆいレールの沿線地域である。また、中心市街地活性化への寄与など、全国の鉄軌道導入運動において指摘される「まちづくり効果」を見事に表現させた好事例でもある。

これらの都市面への効果に続き、公共交通にどのようなインパクトを与えたのかを見ていきたい。


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