路上荷捌き施設


荷捌き施設とは、商店や住宅へ配送する荷物の積み下ろしスペースのことで、一般的にはその敷地内に設けられます。とはいえ、敷地が狭い個人商店や商店街ではそういうわけにもいかず、道路上で荷捌きをしているのが実情です。

しかし、道路上での無秩序な荷捌きは違法駐車を助長し、円滑な交通に支障となるだけではなく、交通安全や景観上も問題です。また、2006年6月施行の改正道路交通法により違法駐車の取締りが厳格となり、配送トラックもその対象となったことから大きな社会問題となっています。

これらに対応する施設として、諸外国や国内の一部で整備が進むものが道路上に荷捌きのスペースを確保し、そこで時間帯および停車時間を限って荷捌きさせようという発想で整備された「路上荷捌き施設」です。



1 荷捌きの現実
荷捌きとは、商店への商品の配達や返品受け取り、オフィスへの配達や商品発送のための荷物の積み下ろしのことです。
ある程度の規模以上の店舗やオフィスビルの場合には敷地内にスペースが確保されていますが、小規模な個人店舗や雑居ビルのようなものの場合、そういったスペースはなかなか確保できません。
そうなると、この荷捌きをどこでやるかといえば道路上で行うことになります。

モール
歩行者の多い道を走るトラック(町田市) 車線をふさぐトラック(東京・日本橋)
バスレーンに停車するトラック(水戸市)

このような路上での荷捌きは、交通混雑の原因となるだけではなく、違法駐車の助長、バス停を塞ぐことによる交通安全上の問題、都市景観との悪化を招きます。
また、荷捌き車両による環境悪化も大きな課題です。

2 路外荷捌き施設

そこで、この荷捌きを道路上ではないところでするよう、「共同荷捌き施設」というものを道路以外の部分に設置することが考えられました。
これが「路外荷捌き施設」で、コインパーキングのような小規模なスペースを荷捌きスペースとして使い、そこで荷捌きを行うというものです。
これにより、道路上での荷捌きがなくなり・・・というものなのですが、沿道の店舗や運送会社の協力なくしてはなかなかうまくはいかないものです。
実際、このような設備がありながら路上での荷捌きが問題になっている地域もあり、いかに活用してもらうかが課題になります。特に配送距離が長ければなかなか利用されませんし、難しいものです。

3 路上荷捌き施設の整備

路外の荷捌き施設は地価の高い都心部では難しく、また、開発が進むとなかなか確保が出来なくなります。さらに、町並みの景観からしてもよいことではありません。
そこで、思い切って路上に荷捌きスペースを確保しようという動きが増えてきました。
この考え方から道路上に整備するものが「路上荷捌き施設」です。

路上荷捌き施設は、日本では実験的な整備が開始され、路上パーキングを活用したものが増えています。
しかし、この場合には荷捌きスペースそのものが有料となってしまい、運送業者や搬入先の商店に負担増となってしまいます。そこで、無料で使えるスペースの整備をできないかという動きが見られるようになってきました。

4 海外での事例

海外においてもこの問題は当然発生しており、その都市によって様々な対策が見られます。

1)ローディングスペース
下の写真はオーストラリアにあるローディングスペース=荷捌きスペースです。
ここでは、日本のバス停にような歩道を切り欠いたスペースを使っています。
ローディングスペース ローディングスペース標識
ローディングゾーン(パース) ローディングゾーンの標識(パース)
路上のマーキング(ケアンズ) モール内のローディングゾーン(ケアンズ)

このようなバス停型の路上荷捌きスペースは道路幅員さえ確保されていれば整備が可能であり、比較的簡単に整備が出来ます。
しかし、一般車の駐車がされてしまう可能性は否定できず、運転者のマナーが試されます。

2)路上パーキングを使用
欧米の都市の多くでは路上駐車が認められています。これはむやみな禁止よりも時間を限り駐車を認めることで逆に違法な箇所や危険箇所での駐車を抑制するという考え方です。

路上駐車スペースを活用(カナダ・バンクーバー) 荷捌きスペースのイメージ

5 日本における実験的な路上荷捌き

荷捌きに関しては様々な実験的な施策が全国でおこなわれています。
2001年11月には東京・吉祥寺で行われています。
荷捌き実験(吉祥寺) 荷捌き実験
路上荷捌き実験の様子(東京・吉祥寺)


この実験対象となっている地域では特徴的なことがあります。
当該道路は、日中は路線バスと荷捌き車両に通行が限定されているため、荷捌きが整然と行われるようになると、事実上のセミトランジットモールに近い状況が形成されます。
ここで、もし上述のようなきっちりした荷捌きゾーンの整備が出来れば、本格的なセミトランジットモールとして歩行環境の改善、バス運行の改善も期待できます。

荷捌き実験中の吉祥寺平和通り
   
 


6 日本における本格的導入 〜スムーズ東京21

吉祥寺をはじめとする全国での社会実験が進む中、本格的な導入が2002年からスタートしています。
 
「スムーズ東京21」シンボルマーク


今回のここに挙げた対策は東京都と警視庁が進める、違法駐車対策である「スムーズ東京21」の一環として行われるもので、繁華街や幹線道路の違法駐車対策の一環として、荷捌きをターゲットにしたものが千代田区九段〜駿河台の靖国通りでスタートしました。

1)本格的な路上荷捌きスペース設置
今回、このメインストリートである靖国通りに路上荷捌きスペースが設けられています。
バス停のような形で歩道に切り欠き(停車区画)を設置し、ここを路上荷捌き専用施設としています。


路上荷裁き施設(東京・神田神保町)
 


2)特徴ある規制策
一方、このような荷捌き施設整備によるスペース確保と同時に、交差点部の駐車規制を強化しています。
これまでは路面上に赤い線と駐車禁止マークからなる「駐車禁止区域表示」がされていましたが、今回の対策にあわせ、本格的に交差点部をカラー舗装にすることで駐車禁止区域を明確にすることが行われています。
この駐車禁止表示は非常に明確でドライバーに与えるインパクトも大きく、効果が期待できます。

従前の駐車禁止表示(中央の赤いライン)
今回行われた対策。赤い舗装部分が駐車禁止区域


このような対策が進められる中、実際にどのように渋滞が緩和されるのか、期待しましょう。


7 共同集配送

このような荷捌き施設を多数整備しても、トラック自体の数が多ければどうしようもありません。
ここで、トラック削減をむやみに叫んでも対処法なくしては難しいですね。
そこで、トラックの集配送そのものを減らす方策として、「共同集配送」があります。
これは、運送会社毎になる配送を、複数の運送会社の荷物を1台のトラックで輸送することで減らそうというもので、商店会や商工会議所などが音頭とりになって進められている事例が見られます。
国内では、福岡の天神地区が代表的ですが、他に、埼玉県のさいたま新都心地区(けやき便)などでも行われています。実験的には全国で行われていますね。


8 都市内物流対策こそモールなどの成功の鍵?

人間の移動は自動車でも軌道系でもそれほど問題なく可能といえます。しかし、荷物はその積み下ろしなどの時間を考えると、トラックからの移行は簡単なものではありません。しかし、このトラックを含む商用車対策が重要であるのは言うまでもありません。

LRTなどの導入運動では「トラックを入れなければいい」などという非現実的な論もされますが、LRTやバスの運行やモール化実施のためにトラックを無闇に入れないとか、あるいは物資の搬入搬出をどうするのかを考えない計画では現実的なものとはなりません。
このような荷捌き対策こそある意味で鍵ともいえます。
モールであれば、時間帯規制をかけるなどの対策もありえますし、荷捌き施設をフリンジ(外縁)部に設置して搬送距離を短縮するような工夫も必要です。


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